お隣の木が越境してきて屋根や外壁に被害が出そうな時の対処法
更新日 : 2023年03月30日
更新日 : 2023年03月30日
お隣の木の枝がうちの方に伸びてきた!このままだと自宅にトラブルが及びそう…
お庭の樹木や花、とても素敵なものですが、そのお手入れは大変ですよね。強風で枝が折れたり、秋には大量の落ち葉が出たり、枝などがお隣の敷地に侵入しないように剪定したり、結構な手間がかかります。
ご自宅の庭をしっかり管理していても、お隣からの落ち葉や木の枝の侵入にお悩みの方も多いのではないでしょうか。 お庭の植物は四季を通じて喜びや楽しみを与えてくれますが、時としてご迷惑の種となってしまう可能性もあるのです。 そして、時に困ってしまうのがお隣から越境してきた木の枝。たとえ自らの所有地に越境してきた枝であっても、勝手に切ってしまうのは不法行為になりえます。お隣の方に切ってもらう、ご自分で切る場合は了承を得るなど相応の対応が求められるのです。
越境とは…
境界を超えること。 建物では建物や建物の付属物が敷地の境界線を越えていたり、跨いでいることを指します。 敷地の樹木の枝や葉が敷地の境界線を超えて、隣の家にはみ出しているケースも越境にあたります。 またお隣との境界を超えて、ご自宅の敷地に木の枝や落ち葉が侵入してくることを樹木の越境被害と言います。
土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
しかし、不思議なことかもしれませんが樹木の枝でなく根なら、自分で伐採することは可能です。こちらも民法で規定されています。
隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。
木ではなく、竹の場合、地下茎によって繁殖します。その成長は凄まじく、お家を簡単に破壊してしまいますから、根を切ることは認められているのでしょう。
まずはお隣の方に頼んで切ってもらうのが最適な選択肢です。
「自由に切っていい」と言われた場合は同意書を頂きましょう。
お隣の樹木の枝がご自分の所有地に越境してはみ出してきた場合、頼んで切ってもらうのが一番なのです。 ほとんどの方は樹木の枝などのことで、ご近隣の方とトラブルを起こしたくないでしょう。申し出ればすぐに快く対応してくれることがほとんどです。 しかし、ある程度お歳を召している方の場合、「体の自由が利かないので、自由に切ってくれて構わない」と言われることもあるでしょう。 こういった場合、問題になることはほぼありませんが、稀に後々、トラブルになることもあります。
債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、民事執行法その他強制執行の手続に関する法令の規定に従い、直接強制、代替執行、間接強制その他の方法による履行の強制を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない
ちょっと難しいのですが、要は樹木の伐採において正当性がある場合は料金の支払いをその所有者(お隣の方)へ請求できるということです。所有者(お隣の方)が正当性に疑問を感じる場合はそれを裁判によって判断するということになります。
厄介なのは相手が応じてくれないケースです。応じてくれない理由は「切ると枯れてしまう」、「先祖代々からある木でご神木のようなもの」、「木を切ると縁起が悪い」などさまざまなものがありますが、越境被害を受ける・または受ける可能性がある当事者としてはたまったものではありません。 木を切ると枯れてしまったり、縁起が悪いという場合は「切断する」のではなくて、縄などで縛り、枝の向きや伸びていく方向を変えるという方法もあります。
サイズは違いますが盆栽などで行われている方法であり、庭に地植えするような大きな木でも縄や針金などで枝の向きを矯正し、立派な枝振りに見せるという手法は確立された園芸の技術です。木の健康に与える影響は少ないと言えるでしょう。お隣同士なのですから、このような折衷案も模索すべきです。 話し合いで解決できれば、一番いいのですが、折衷案なども受け入れられない場合は民事調停等の裁判をすることになってしまいます。 何にせよ、お隣の方と不仲になって得することは一つもありません。普段からコミュニケーションを取って、仲良く暮らすのが一番です。
やむを得ない場合は木を切って問題ないこともある
しかしどうしても伐採が必要、という場合、民法には次のように定められています。
(略)次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
一 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
枝の切除を求めたのにも関わらず応じてもらえなかった場合、越境された所有地側で切っても良いことになっています。「相応の期間」とは、枝を切るのに必要な期間、一般的に2週間~1か月程度といわれます。越境がごくわずかだったり大きな問題もないのに切ってしまったりした場合には問題になることもあるので注意しましょう。
三 急迫の事情があるとき。
例えば隣の空き地に大きな古木が残されており、それが朽ち初めてきて、強風などで倒壊する危険性がある時はどうするべきなのでしょうか。
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の所有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
前項の規定は、竹木の植栽又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。
他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げない。
前項の規定は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用する。
お隣とご自分の土地の境を越え、それが家屋などに接触し、屋根や外壁などに傷を付ける恐れがある場合、瑕疵にあたります。 瑕疵とは正しい取り扱いがされずに不具合や不良を起こしていることです。樹木の越境によってお家に影響が出ている場合、瑕疵にあたりますので伐採や剪定を行っても法律によって保護されます。
土地の所有者は調べることができる
その土地の所有者が分からない場合は市役所や法務局で調べることができます。 また、法務省が提供しているインターネットの登記・供託オンライン申請システム「登記ねっと・供託ねっと」で調査することも可能です。 民間でもインターネットでそういったサービスを提供しているところもあります。 市役所や法務局、インターネットで調べる場合、料金がかかりますが、数百円程度です。
また、手を尽くして調べてみたけれど所有者が不明、行方不明という場合にもやむを得ない場合として、伐採が認められます。
二 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
少子高齢化社会・空き家問題、これから樹木の越境問題は増加しそうです
1世紀に入り、日本は未曾有の少子高齢化社会を迎えました。空き家問題も既に社会問題になっています。 「お隣の樹木が伸びてきて困っているけど、連絡がつかない」というケースは増えていくでしょう。こういったことを防ぐためにもお隣の方とはコミュニケーションを取り、お庭やその樹木が越境した場合の対応についても話し合っておくべきです。
樹木などがなくても、お庭が雑草だらけになれば、虫も発生するでしょうし、治安にも影響します。お隣の方からご希望を聞き、自分の希望も伝えておくのが理想です。 また「どうも人付き合いが苦手」という方は親類の方やご子息に希望を伝えておきましょう。 将来的にご自宅が「適切に管理されるのか」よくコミュニケーションを取っておくことが肝要です。その際お隣やご自宅がご子息に引き継がれることになった場合にもすぐに連絡できるような配慮が必要です。 引き続き、実際に樹木の越境でどのようなトラブルが起こりえるのか見ていきましょう。
落ち葉というのは見渡せる範囲に木がなくても、どこからともなく飛んで来るものです。軽く、風に舞いやすいので自然なことですが、それが明らかにお隣の木のものである場合、大変な問題です。落葉樹の場合、ある程度は仕方のないことですが、できるだけ負担が減るように改善を求める必要があります。
屋根に落ちた落ち葉、その大半は屋根の勾配に沿って、そのまま雨樋の中に落下してくるでしょう。 雨樋はあくまでも雨水を流すためのもので、落ち葉を流すようにはできていません。限度を超えればどこかで詰まり、雨樋から雨水が溢れます。溢れた水は軒天や外壁を伝うことになりますので、劣化を早めます。 雨樋から溢れた雨水が軒天を腐食させてしまうことも起こりえます。
木の枝はそれなりに固くて強度があります。それが成長によって屋根や外壁に押し付けられれば傷つきます。 強風が吹き、枝や葉が擦られ続けられれば、相当の範囲に傷がつき、それも深いものとなるでしょう。傷が深ければ、表面の屋根材や外壁材だけでなく、内部に雨水が浸入してくることも考えられます。
多くの瓦屋根は棟などを除き、瓦が固定されていないことがほとんどです。 したがって、強風や地震の時にずれることも起こります。強風時に木の枝が接触したとなれば、ずれてしまうでしょう。 ずれるだけならともかく、風が強かったり、枝が太かったりすれば、割れたり、落下させてしまう可能性もあります。
電話線も電線も大事なライフラインです。それが木の枝との接触によって切れたとなれば一大事です。 電線の場合、漏電などの二次被害、それが原因となって起こる火事などの三次災害を引き起こす可能性があります。電話線の場合、インターネットも使えない、固定電話も使えないという事態が起こります。たまたま携帯電話やスマートフォンを充電している時に電線と電話線が同時に切れたら… 二次被害や三次災害を防ぐために電力会社に連絡できない事態に陥るのです。
ガラスなどの割れやすいものの近くに枝が伸びきている場合、かなり危険です。 ちょっとした強風でも枝が煽られて、窓ガラスに接触すれば割れて砕け散ります。 雨をともなった強風時にこんなことが起こり、後片付けをしなければならないとなったら、かなり悲惨です。 雨戸やシャッターがある窓だったら、閉めることによってそれなりに防止することは可能ですが、小さい窓の場合、そういったものが備えられていないものもあるでしょう。
強風で枝が折れるというのは自然現象です。暴風になれば、それなりに太い枝も折れますし、越境していればそれがお家やお庭、お車などに衝突する危険性も高まります。 お庭に高価な盆栽などが並べられており、そのほとんどがなぎ倒されたりしたら、目も当てられません。車などに直撃した場合も同様です。
倒木してしまうかもしれない木、見ているだけで恐いですよね。 大きさにもよりますが、それがお家に倒れてきたら、被害は莫大なものになりますし、倒れてきそうなところや寝室やリビングだったら、ご自身だけでなく、ご家族の身の安全も脅かされていることになります。安心して生活できないのは大変な問題です。
適度に直射日光を遮ってくれるのなら問題ないかもしれませんが、木はどんどん成長していきます。 いつの間にか、お部屋も暗くなり、日当たりが悪くなったせいで、湿っぽくなってしまうことも考えられます。越境してくる木の枝によって住環境が悪化してしまうケースもあるのです。
「新築当時は窓の端にちょっとだけ緑が映る程度だったのに、現在では窓一面を覆ってしまっている。この窓からの眺めが気に入っていたのに…」、こんなことも起こりえます。 窓からの景観を気にしている方にとっては重要な問題です。お望みの眺望を得られなくなるケースもあるのです。
野鳥はそれなりにかわいらしく、好きという方も多いでしょう。カラスはゴミを荒らすというイメージが強いせいか好ましくないという方もおられます。 筆者の自宅では越境とは関係のない隣地に大きな木があり、それに鳥やカラスが集まっていました。ある日、とても生臭いのでバルコニーに出てみると、食いちぎられたザリガニの死骸と生ゴミが落ちていました。おそらくカラスが運んできてバルコニーで食べたのでしょう。
お家の値段というのは築年数はもちろんのこと、環境も重要視されます。 築浅の物件であっても、隣地から木の枝が越境しており、その所有者となかなか連絡がつかないのであれば、利便性の高い地域であっても、買いたい方は少なくなるでしょう。 ご自宅やご自分に原因がないのに、売るに売れないことも出てくるのです。
木は虫にとっても格好の住処です。葉を食べる毛虫や蛾の幼虫が住み着けば、それを捕食する虫もやってきます。また毛虫や蛾と捕食する虫の他、それらと共生関係にある虫を呼び寄せます。 さらに今度はその虫達を捕食する鳥類もやってきます。1本の木でこういった食物連鎖が起こるのは生物学的に興味深い話ではありますが、その影響を受けるのは勘弁してほしい話です。
樹木は成長するからこそ越境問題は常につきまとう
木は年月とともに成長していきます。もちろんこれらは剪定などの適切な管理をせずに越境してしまった場合、放置した分だけ被害も大きくなっていきます。日照の関係などで個々の成長は異なるにしても、木が複数本あれば、越境被害は年々、拡大していくことになるのです。近年このようなケースが増えている理由として空き家問題もそうですし、また少子高齢化が進み『これまでは元気にお庭をお手入れしていたお隣の方もお歳を召してしまい、庭の手入れをすることがなくなってしまった』、『遠方に住んでいるご子息のお家で過ごすことが多くなり、滅多にこちらで過ごすことがなくなった』など、管理ができていないケースも増えているためです。 樹木の越境はご自身のみならず周囲を巻き込むを大きな問題だということを認識し、そのための準備や適切な管理を怠らないようにしなくてはなりません。
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