瓦屋根の耐震性は大丈夫?地震対策のチェックポイント
更新日 : 2024年09月26日
更新日 : 2024年09月26日
2024年1月1日午後4時10分頃、石川県の能登地方を襲った大地震。
この地震のマグニチュードは7.6と、1995年の阪神・淡路大震災(M7.3)や2006年の熊本地震(M6.5)を上回る規模でした。
発生から数か月経過した今でも、避難者は多く、復旧には多くの時間を要しています。特に被害が大きかった輪島市や珠洲市では、古い建物が崩壊する事例が目立ち、その多くが伝統的な瓦屋根を持つ住宅でした。
現在、ガルバリウム鋼板やスレートなど軽量な屋根材が主流となっており、重い瓦屋根の耐震性を心配される方も多いでしょう。この記事では、瓦屋根の耐震性について、従来の工法による問題点と、それに対する地震対策について詳しく説明していきます。
能登半島地震で大きな被害を受けた建物の多くは、伝統的な工法で建てられた瓦屋根の家でした。
瓦は1枚あたり約3kgの重さがあり、土葺きの土や下地の重さを含めると1坪あたり約240kgに達します。
瓦屋根は重いがゆえに、家の重心が高くなり、地震時の揺れが大きくなるとされています。そのため、近年では軽量な屋根材を選ぶ方が増えています。
確かに、軽い屋根材の方が建物の揺れは少なくなる傾向がありますが、重たい瓦屋根だからといって、必ずしも崩壊のリスクが高いわけではありません。また、軽量な屋根材を使用したからといって、倒壊しないという保証もありません。
家の耐震性は屋根の材質や重さだけで決まるものではないことを理解しておくことが重要です。
能登半島地震で崩壊した建物の多くは築年数が長く、古い工法で建てられたものでした。しかし、瓦屋根でも「ガイドライン工法※」に従って施工された住宅は崩壊せず、被害を免れたことが確認されています。
つまり、瓦屋根が地震に弱いのではなく、これまでの施工方法に問題があったといえるでしょう。
※「ガイドライン工法」とは
⇒2001年に策定された「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」に基づいた施工手法のことです。この工法では、屋根の平らな部分の瓦はすべて釘で固定し、棟の部分には芯材や補強用の金物を使用することが推奨されています。
能登半島地震で崩壊した建物の多くは、耐震性が不十分な築年数の長い住宅でした。
「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」が制定される前に建てられた瓦屋根の多くは、土葺きや引っ掛け桟葺きで施工されており、屋根の下地に固定されていない瓦が崩れ落ちてしまい、大きな被害をもたらしました。
施工方法の違い
土葺き | 土で屋根瓦を固定する工法 (1923年の関東大震災と1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに、倒壊の危険が周知され施工数は大幅に減少) |
引っ掛け桟葺き | 桟木を屋根の下地に留め、瓦を桟木に引っ掛けて釘で固定する工法 (瓦4枚につき釘1本を打ち付けるが、棟瓦は土と漆喰で積み上げられているのが主流) |
ガイドライン工法 | 瓦を桟木に引っ掛けて、瓦1枚につき釘1本を打ち付けるのを最低基準とした新しい工法 地域ごとに風速や地表面区分の基準も設けられる |
伝統的な土葺き工法は、瓦を土の粘着力だけで固定するため、時間が経つと劣化して瓦が外れやすくなり、地震時に瓦が落下するリスクが非常に高くなります。
引っ掛け桟葺き工法は現在でも一般的に使用されていますが、ガイドラインの策定後は、釘を打ち込む本数が増え、厳密な基準が設けられたことで、より頑丈で耐震性の高い仕様へと進化しています。
ガイドライン工法に基づいて施工された瓦屋根が、能登半島地震で瓦が落下しなかったことから、瓦屋根そのものが地震に弱いわけではなく、従来の施工方法に地震への耐性が不足していたことが明らかになりました。
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⇒土葺き瓦屋根を災害に強化!
ガイドライン工法による最新の瓦屋根は、瓦本来の美しさと高耐久性を備えつつ、地震への備えも強化されています。
2022年1月からは新築住宅において、すべての瓦の固定が義務付けられています。さらに、防災性能に優れた防災瓦が使用されることが一般的になっています。
しかし、築年数が古い瓦屋根の家では、予期せぬ地震で瓦が落下したり、家自体が倒壊するリスクがあります。
屋根は外壁と並んで家を守る非常に重要な部分です。現在、古い瓦屋根の家に住んでいる方には、以下の3つの地震対策をおすすめいたします。
①ガイドライン工法による棟の再施工
②防災瓦への葺き替え
③軽量な屋根材への葺き替え
①ガイドライン工法による棟の再施工
瓦屋根の地震対策としてまず挙げられるのが、ガイドライン工法による棟の取り直し工事です。
棟取り直し工事は、屋根の頂点にあたる棟瓦と呼ばれる部分のずれ、漆喰の剥がれなどを補修する工事のことです。
棟瓦は経年で固定力が弱まり、地震時に崩れやすい部分です。再施工することで耐震性が向上します。
ガイドライン工法では、既存の棟瓦を撤去後に、棟補強金物や芯材を取り付け、防水材や、シリコンを含み耐久性のある南蛮漆喰を用いて棟瓦を積み直します。
また、棟を低く施工することで、屋根の重量が減り、耐震性がさらに向上します。
②防災瓦への葺き替え
瓦屋根の地震対策として、防災瓦への葺き替えも推奨されます。
防災瓦は従来の瓦の欠点を克服し、地震や台風に強いように改良された瓦です。
特殊な形状の防災瓦同士を連結する「ロックアーム」で瓦のずれや浮きを防ぎ、耐震性能が向上します。
防災瓦の特徴
瓦1枚1枚が連結されており、ずれや浮きが起こりにくい
ビスや釘で固定されているため、落下しにくい
従来の瓦よりも10%程度軽いため、耐震性に優れている
現在の瓦屋根の多くは防災瓦を使用しているため、築20年以内の比較的新しい住宅であれば、大きな心配はないでしょう。
しかし、2001年以前に建てられてから一度も瓦屋根の補修を行っていなかったり、すでに瓦がずれたり浮き上がったりしている場合には、地震などの際に瓦が崩落する可能性があります。
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③軽量な屋根材への葺き替え
瓦屋根の地震対策として、軽量な屋根材への葺き替えも効果的です。
軽い屋根材にすることで、建物の重心が低くなり、耐震性が向上します。
軽くて丈夫なガルバリウム鋼板は瓦に代わる軽量な屋根材として主流な金属屋根材となってきています。新築・リフォームのどちらにおいても人気を集めています!
◆瓦より軽量な屋根材
ガルバリウム鋼板
アスファルトシングル
化粧スレート
樹脂繊維入り軽量瓦
ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板屋根は、近年最も普及している金属屋根材の一つで、多くの方がその名前を耳にしたことがあるでしょう。瓦屋根と比べると、重量は約10分の1です。
かつては金属屋根が「夏場は暑い」「雨音が気になる」「見た目が安っぽい」などといったイメージがありましたが、これらは過去の話です。最近では、断熱材が一体化された製品や、遮熱塗料が施されたものが増え、断熱性や遮音性に優れたものが多くなっています。さらに、デザイン面でも美観を重視した製品が豊富に揃っています。
瓦屋根からの葺き替えにおいて、耐久性だけでなく、断熱性と遮音性を兼ね備えた美しいガルバリウム鋼板屋根がおすすめです。
アスファルトシングル
アスファルトシングルは、北米で100年以上も前から使用されている屋根材で、グラスファイバーを芯材とし、アスファルトを浸透させてコーティングし、表面に石粒を散布したものです。
日本でも新築の戸建て住宅で徐々に需要が高まっています。重量は瓦屋根の約5分の1です。
化粧スレート
化粧スレートは、セメントを主成分とする薄い屋根材で、瓦屋根と比べると重量は約3分の1です。この材料は瓦の代替として急速にシェアを広げました。
最近では金属屋根に人気が移りつつありますが、比較的コストが抑えられ、施工業者も多いことから、依然として一定のシェアを持つ屋根材です。
樹脂繊維入り軽量瓦
このカテゴリーでは、ケイミューの「ROOGA」が代表的な製品です。瓦のような高級感のある見た目を持ちながら、重量は約半分以下で、1枚ずつ釘で固定するため、地震時に瓦が落下する心配がありません。
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⇒瓦からガルバリウムへの葺き替え
なお、瓦屋根の葺き替え工事においては、住宅の防災性能を向上させるために、費用の一部が助成されることがあります。
住んでいる地域によって助成金や補助金の制度は異なるため、工事を検討している場合は、まず自治体に問い合わせることをお勧めします。
2001年以前の瓦屋根は、多くが固定されておらず、落下のリスクがあります。
築年数の長い瓦屋根の家に倒壊の危険があるのは、耐震性が不十分で、経年劣化が進んでいるためです。
家の耐震強度は屋根の重さや施工方法によって大きく左右されるため、古い工法で施工されたままの瓦屋根は、崩壊する可能性があります。
「築30年の瓦屋根が心配」「能登半島地震の被害を他人事と思えない」といったお悩みがある方は、専門業者に相談してください。
大きな地震はいつどこで起きるか予測できません。地震で家が崩壊してから後悔しても遅いのです。
私たち街の屋根やさんでは、まず無料点検で、屋根の修理が本当に必要か、工事後に問題なく生活できるかなど、築年数や屋根の状態を徹底的に調査いたします。
お客様立ち会いのもと、プロが住まい全体をくまなく検査するのでご安心ください!
まとめ
●瓦屋根だからといって必ずしも地震に弱いわけではありません。●瓦屋根の家が地震で崩壊する理由は、築年数が長く、耐震性が不十分で、瓦が固定されていないことが主な原因です。
●地震が心配な方には、以下の対策を推奨します。
1.崩れやすい棟部の取り直し工事
2.防災瓦への葺き替え
3.軽量な屋根材への葺き替え
●大地震はいつどこで起きるか分かりません。一度無料点検で屋根や住まいを見直してみませんか?
街の屋根やさんは千葉県以外にも東京都、神奈川県などでも屋根工事を承っております。日本全国に展開中ですので、貴方の地域の街の屋根さんをお選びください。