日本の太陽熱温水器の歴史は何と70年以上もあるそうで、1970年代から普及がかなり進んだそうです。一時は設置に対して補助金を出していた自治体もあったくらいですから(袖ケ浦町も出していました)、かなり画期的な製品だったことが伺えます。自分も幼心に「考えた人は頭がいいなあ」と思っていました。その太陽熱温水器ですが、故障したりしたものが屋根の上にそのまま放置されていませんか。使っていないのだったら、早めに撤去することをお勧めします。
撤去したほうが良い理由として、まず強風時の危険性が挙げられます。取り扱い説明書には「台風などで強風が予想される場合、必ず満水にして重みをつけて飛散や移動しないようにしてください」という感じの文言が記載されていたはずです。太陽熱温水器を使われなくなった理由の多くはパッキンの劣化などによる水漏れです。漏水によって太陽熱温水器に貯水できなくなったためにそのまま放置されることが多いのです。漏水によって貯水できないのだから、重量が増せません。さすがに飛散することはほぼないでしょうが、屋根の上で移動して屋根を傷つけてしまうことは充分に考えられます。また、架台に取り付けられ屋根との隙間が充分に取られているものに関しては問題がないのですが、架台無しで屋根面に直接取り付けられている場合、その下に汚れが堆積してしまうこともあります。汚れが堆積してしまうと雨水の流れを阻害しますので、雨漏りに繋がりやすくなりますし、その水分で植物が育ってしまうこともあります。
弊社がある袖ケ浦市や隣の木更津市では数十年前、この太陽熱温水器の訪問販売が流行り、結構な数のご家庭が購入し、設置していました。しかも、その頃は人口が増えていた時代でしたので戸建てのお住まいはどんどん増えるし、それに合わせて太陽熱温水器を購入するご家庭も増えていました(補助金はその数年前に打ち切られていました)。毎年、春になると訪問販売員が現れて、未設置のお住まいに飛び込み営業に行っていました。梅雨前から夏の間、彼らは姿を消し、夏の終わりごろになると戻ってきました。夏の終わりに戻ってきた彼らを見かけると「ああ、夏休みももう終わりなんだなあ」と切なくなったのを思い出します。子供の頃の私にとって、彼らは季節ごとの風物詩にまで成長していたのです。秋になって戻ってきた彼らがお隣さんに「これから秋、冬とガス代が大変でしょ。太陽熱温水器をつければ、節約できますし、数年で元が取れますよ」とセールストークを繰り広げていたこと場面が蘇ってきます。今、思えば冬と梅雨はそれほど暖かくならない(実体験)から、顧客満足度が低く、売りにこなかったのでしょう。中春や夏の終わりに設置すれば、設置したお住まいの方々が「天気の良い日は火傷するくらいよ」と口コミで拡散してくれる可能性が高いですものね。割としっかりとした営業戦略です。
思い出話はここまでして、最後に重要なお話です。先程、『太陽熱温水器の訪問販売が流行った』ことを述べました。この訪問販売というところが重要です。太陽熱温水器はかなりの大きさです。私たちは「屋根の上は地上からだと、よく見えないし、見えても詳細までは分からない」とよく書いています。また「離れたところからだと、屋根は見えるが詳細までは分からない」とも記載しています。何が言いたいのかというと、太陽熱温水器はかなりの大きさなので離れたところから見ても、それが太陽熱温水器だということが分かるということです。そして、それが木更津市と袖ケ浦市では訪問販売された可能性が非常に高いものであるということです。つまり、「訪問販売で購入した」、イコール「押しに弱い人が住んでいる」という判断材料にされる可能性があるということなのです。事実、太陽熱温水器を屋根の上に設置していた頃は次々と飛び込み営業の方々がやってきましたが、撤去してからはそれが全くなくなりました。お住まいの設備、一つを取っても彼らはそういった無駄を少なくする材料にしているのです。これもまた、私の実体験ですから、間違いありません。