大波・小波を問わず、波板スレートと言えば工場や倉庫、そして畜舎の屋根材や外壁材として使われてきました。したがって、工業都市部などだけでなく、畜産業が盛んな農村部でも見ることができます。もともと作業時や保管している物品への雨・風だけを凌げればいいという考え方なのか、現在では割れたり、欠けたり、穴の開いた波板スレートの屋根や外壁も多く見かけるようになりました。このページではそういった大波スレート、小波スレートのメンテナンスを中心にご案内していきます。
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日本が工業国だった昭和の象徴的な建物と言えば屋根も外壁も波型スレートという工場や倉庫ではないでしょうか。昭和生まれの大人にはちょっと懐かしい総波型スレートの建物ですが、まだまだ現役という建物も多いのです。現役という建物はメンテナンスを続けて長く使い続けてほしいという願いを込めて、波型スレートの改修方法を中心に特徴などを紹介しています。

波板(波型)スレートの特徴、材料、種類など
波形スレートはセメントと繊維を成型して作られた波型の形状の板です。繊維としてアスベスト(石綿)が使われており、この有無が社会問題化しているのは皆様もご存知の通りです。アスベストの有無の目安は規制と製造年によって大きく変わります。
2004年まで アスベストを含有
2004年以降 アスベストをほぼ含まず
2004年以降はアスベスト(石綿)の代替品としてグラスウールやロックウール(岩綿)が使用されています。ロックウール(岩綿)は字面から石綿と混同されていることも多いのですが繊維が大きく、発癌性は極めて低いとされています。

波板スレートのメリットとデメリット
メリット
耐久性 耐用年数は25年以上とも言われている
耐火性 法定不燃材料 他の材料との組合せによるが各種防火・耐火構造として認定されている
遮音性 内部に伝わる音、外部に漏れる音が少なく、雨の日も静か
税金面 老朽化した波板スレートを同じ波板スレートで葺き替える場合は一括損金で処理できる
価格 比較的安価
デメリット
アスベストが含まれているものがある
土埃などが付きやすく、汚れやすい
波板スレートの種類(大きさ)と用途
波型スレートは規格で大きさが決まっており、現在はピッチ(一山の横幅)130mmの大波とピッチ63.5mmの小波が流通しています。用途も大きさによって決まっており、大波スレートは屋根材、壁材、両方に使えますが、小波は壁にしか使用できません。ただ、かなり昔に作られた建物の場合、小波が屋根に使われているということもあるようです。また、非常に似た形状のものとして金属の波板も流通しています。こちらはピッチ76.2mmの大波とピッチ31.5mmの小波が規格となっています。過去、金属波板の大波の規格、ピッチ76.2mmで作られたスレートもあったようです。さらに現在でも小波スレートの規格、ピッチ63.5mmで作られた金属波板が中波と呼ばれ、流通しています。
大波スレート ピッチ(一山)130mm
小波スレート ピッチ63.5mm
大波(金属) ピッチ76.2mm
小波(金属) ピッチ31.5mm
スレートを使用して生産されている波板はほぼ130mmか63.5mm
金属を使用して生産されている波板は76.2mmと31.5mmが主流(63.5mmのものが中波として生産されていることもある)

それぞれで波の幅(ピッチ)と高さが違うので見分けるのは簡単だが、稀に小波スレートの規格、63.5mmのピッチで金属波板が中波として生産されていたこともあった。
大波スレートのメンテナンス
大波スレートの屋根の場合、まず問題となるのがスレートよりもそれを固定しているボルトなどの金属類です。これらが錆びてきたり、ボルトの周りのシーリング材が劣化してきて雨漏りするという病状は古い工場や倉庫でよく起こっている問題です。シーリングやコーキングによって対処はできますが、いたちごっこになってしまいがちなので傷みが見られるボルトはすべて交換してしまうことをお勧めします。

古くなった波形スレート屋根のボルトは錆びていることが多い。また、苔が繁殖しているという風景もよく見られる。
大波スレートの屋根塗装
大波スレートに限らず、波板は半円と半円を組み合わせたような形状をしているので、その正確な表面積が分かりませんよね。屋根塗装するには正確な表面積を知る必要があるので、大波と小波別に係数を掲載しておきます。屋根の斜面の長さに係数をかけることによってほぼ正確な表面積を算出することができます。外壁に波板が使われている場合もこの係数によって正確な面積を求めることができます。
大波スレート ピッチ130mmの場合 係数は1.154
斜面の長さ×水平方向の長さ×係数1.154
小波スレート ピッチ63.5mmの場合 係数は1.144
大波(金属) ピッチ76.2mmの場合 係数は1.15
小波(金属) ピッチ31.5mmの場合 係数は1.20
大波スレートの部分交換(張替え)
飛来物などによって大波スレートが一部破損してしまったという場合、その部分だけを交換して張り替えるということも可能です。老朽化してきた大波スレートで傷んだ部分だけを交換するということも可能ですが、交換したら他の場所が悪くなる、そこの交換したら他の場所が悪くなるといったいたちごっこになることが多いので、思い切って全面改修すべきでしょう。
交換した新しいスレートは新しいので水弾きもよく、雨水が流れやすくなります。そうなると、その周辺の古くなったスレートにこれまで以上に雨水が流れることになり、負担が増えるので傷みやすくなるのです。これが替えた傍から悪くなるといういたちごっこの原因です。結果的には全面的に換えてしまった方が良かったということも少なくないのです。

大波スレート屋根への屋根カバー工法
全面張替えや葺き替えはアスベストを含んだ屋根材を撤去するため、どうしても費用が高くなりがちです。廃材をほとんど出さず、大波スレート屋根の全面改修を行う場合は屋根カバーが最適です。これまでの大波スレート屋根の上に金属屋根材を被せるので屋根が二重になりますので、断熱性も向上します。屋根カバーに使われる屋根材はガルバリウム鋼板が大半で、最近のものは生産時に遮熱塗料が塗られている上、屋根が二重になるので、夏の暑さ対策にもなります。

近年では大波スレートに屋根カバー工事を行うために造られた屋根カバー工法専用の屋根材も存在。全国的にかなりの需要があることを伺わせる。
老朽化した波板スレートを同じ波板スレートで葺き替えたり、貼り換えは税制で優遇されています
同様の屋根材を使用して波板スレートを葺き替えたり、貼り換えたりした場合は一括損金として処理できることをご存知でしょうか。税制面での優遇処理が受けられるのです。破砕しない限り、アスベストが飛散する心配はないといっても、やはり近隣の住民は不安ですよね。新しい波板スレートに葺き替えてしまえば、雨漏り等の心配もなくなりますし、近隣の方々の不安も取り除けます。ご近所の方に働いてもらい、雇用の問題を解決したいと考えている経営者の方もいるでしょう。このような改修は周辺地域へのアピールにもなりますので、お薦めです。
波板スレート(大波スレート・小波スレート)のまとめ
工場や倉庫に使われることの多い大波スレート、丈夫で耐用年数も長いのですが、それを過ぎて使われているであろうものも見かけられます。耐用年数を過ぎたものは割れやすくなっていますし、また、工場の屋根の場合、下で生産されていたものの影響を受けるため、極端に弱くなっている場合もあります。組み立てや生産でものづくりには自信があるからといって、屋根に上ったりするのはやめてください。勝手が違い、かなり危険です。街の屋根やさんは工場や倉庫の屋根に関しても豊富な実績がありますので、私たちにご相談ください。