昔ながらの防水下地であるバラ板のメンテナンスについて
更新日 : 2021年05月13日
更新日 : 2021年05月13日
屋根の防水下地
屋根の防水を考えるると、誰もが一番に屋根材に注目するのではないでしょうか?確かに屋根材によって雨水を防いでいるのですが、実は屋根材だけでは十分な防水にはなりません。
屋根材よりも、その下に設置されている防水紙(ルーフィング)があることで屋内への浸水を防いでいるのです。瓦やスレートの場合は重なるように設置されているので、水分が入りにくくはなっていますが、風向きや雨量。さらには雪などの場合は屋根材の隙間から内部に浸水することがあります。浸水してきた雨水を完全に遮断するために防水紙があるので、逆に防水紙に穴などが空いていなければ屋根材が破損した場合でもすぐに雨漏りするようなことはないのです。
現在の屋根の下地と昔との違い
最近の下地は野地板に構造用合板、その上にアスファルトルーフィングという防水紙、その上に屋根材という構成です。それに対して築年数が40年以上前になってくると、野地板にはバラ板、防水紙にはトントンという杉の皮が使われています。その上に屋根材というのが一般的ですが、さらに古く60年以上前になるととんとんの上から土を使っている(土葺)の屋根もあります。この工法は現在ではほとんど使われることがなく、神社仏閣、もしくは蔵など特殊な建物でみることができます。
バラ板とは
バラ板は屋根の下地を構成する野地板の一種です。屋根は何層かのレイヤー構造になっており、一番上に屋根材、その下に防水紙、さらにその下に野地板が垂木の上に取り付けられています。
バラ板の素材は杉の木で、大体90mm~120mm程にカットした細長い木材です。小幅板(こはばいた)や荒野地(あらのじ)などの名称でも呼ばれています。バラという名前がつく通り細長い板でサイズも均一ではありません。そのため屋根前面を隙間なく覆うという考えではなく、逆に通気性を良くして乾燥しやすくするために隙間をあけています。
近年では防水の技術が向上しており、防水紙自体に透湿といって湿気が籠りにくいものが主流です。そのためバラ板よりも構造的に強い構造用合板が最近は使われており、バラ板は新築で使われることはほぼなくなりました。
バラ板のメリット・デメリット
・メリット
バラ板は前項でも述べた通り、最近では殆ど使われることがありません。しかし、それより前は野地板のスタンダードだったバラ板にはやはりメリットがあったからです。その一つは通気性の良さです。材になっている杉は乾燥しやすいことや、設置においても隙間があることで屋内の湿気や熱気が小屋裏に籠りにくく、結果として屋根が長持ちすることになります。実は現在主流の構造用合板よりもその耐用年数は長く、約40年ほどです。
・デメリット
現在主流の構造用合板と比較し、デメリットは強度が低いことです。バラ板の屋根の場合は屋根材の重さにも関係しますが太陽光パネルの設置をご検討される場合は、屋根の強度の問題からそのままでは設置できないケースも多いです。
他にもバラ板の設置は隙間があるため、防水紙が傷んだ場合の雨漏りのリスクも高まります。
バラ板のメンテナンス時期
バラ板は耐用年数40年程です。乾燥しやすい材や設置方法なので湿気による腐食は屋根が健常ならそこまで問題はありません。しかし雨漏りすると材自体が腐食てしまったり、台風の飛来物で屋根が破損するケースもあるので耐用年数に限らず都度のメンテナンスが必要です。また、屋根材自体が重い陶器瓦の場合はその分のバラ板にも負担がかかるため、建物の強度を考えてバラ板から構造用合板に交換するケースが多いです。
街の屋根やさんでは屋根の点検を行う場合、屋根に上って実施しますが、野地板自体が傷んでいるとその上を歩くとブカブカと沈み込むことがあります。そうなっているとかなり傷んでいる証拠ですので、野地板を交換しなければなりません。
バラ板の野地板のメンテナンス方法
バラ板をメンテナンスするといってもほとんどの場合が交換となります。部分的、もしくは全体的な交換をする上で、バラ板が屋根材の下に設置されていることから、メンテナンスをする場合は一旦屋根材を撤去する必要があります。
そのため、殆どが屋根葺き替え工事に合わせて野地板のメンテナンスをすることとなります。
その場合は防水紙も新しく交換し、野地板もバラ板よりも強度の高い構造用合板を設置するので以前よりも強い屋根へと生まれ変わります。
バラ板の交換方法は主に2つです。
・増し張り(ましばり)
増し張り、もしくは重ね張りともいいます。もともと設置されていたバラ板の上から重ねて野地板を設置する方法です。野地板が二重になるので屋根の強度はアップすることや、地震の揺れにも強くなります。
この施工ができるのはバラ板や垂木に傷みがないことです。
・張り替え
バラ板や垂木が腐食している場合、その上から増し張りしても見た目は綺麗になっても強度の回復は望めません。そのような箇所は撤去して新しい野地板に交換します。増し張りは野地板が二重になり重量が増しますが、張り替えは重量的には大きくかわらないため屋根の軽量化を目指す場合は張り替えをお勧めします。
まとめ
古くから使われている野地板であるバラ板、築年数が40年以上経っているお住まいの場合はこのバラ板のケースが多いのですが、この時期はすでにメンテナンス時期を超えています。
特に古くなったバラ板は水分による腐食も早いため、経年劣化に気付かず、急な雨漏りに困らないためにも、一度専門家の調査を受けることをお勧めします。最近では耐火性の高い野地板もありますし、バラ板から構造合板を使うことで建物の強度も向上させることができます
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